少し前に読んだ人間をお休みしてヤギになってみた結果のレコメンドで出てきて面白そうだったので購入。


バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)


バッタの研究のためにモーリタニアに単身飛び込んだ日本人バッタ研究者の方のノンフィクションです。3年に及ぶモーリタニアでの研究生活を綴ってあります。

本を読んでいて感じるのは著者の前野ウルド浩太郎さんの志の高さ、勢い、そして清々しさで、その力強さで苦難を乗り越えて道を開くという要するに壮大な日記です。いまよく見てみると本の帯に「科学冒険就職ノンフィクション」と書いてありますね。

「人間をお休みしてヤギになってみた結果」に次のような記述があります。

未来について心配するためには想像しなければならない

トーマス・トウェイツ 人間をお休みしてヤギになってみた結果(新潮文庫) (Kindle の位置No.95-96). 新潮社. Kindle 版.

著者の前野ウルド浩太郎さんも中盤に期限が迫り資金が底をつきかけ同年代の研究者や友人の生活と自身の現状を比較し、自身の将来を想像し悲観するシーンがあります。このシーンはこの「未来について心配するためには想像しなければならない」を彷彿しました。しかし、その数ページ後には…

無収入なんか悩みのうちに入らない気になってきた。むしろ、私の悲惨な姿をさらけ出し、社会的底辺の男がいることを知ってもらえたら、多くの人が幸せを感じてくれるに違いない。

前野 ウルド 浩太郎. バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書) (Kindle の位置No.2733-2734). 光文社. Kindle 版.

実際には相当な悩みだったということは想像に難くないですが、このようにご自身の苦難も自虐的に面白おかしく仕上げています。悩み初めてから悩みを吹き飛ばすまでの過程にでてくる価値観は今の日本で生きる我々には古臭さを感じるかもしれませんが、普段生活しているとなかなか思い出せない気持ちでもあり、ここも含めてとにかく随所でご本人の人の良さと純粋さが感じられるので、読んでいて如何に自分が卑小であるかということを思い知らされます。前向きさをもらえつつも、なかなかに耳が痛くもあります。自分が失ってしまったであろうものや、懐かしいものを数多く思い出させてくれるような、そんな感じの本です。

モーリタニアの文化や砂漠での生活もにも多く言及してあります。印象に残っているのは…

  • 実際のオアシスは汚いこと
  • タコが「プルプル」と呼ばれていること
    • タコは日本に輸出されているらしい。現地の人は食べないとのこと
  • ヤギはなんでも食べる(ダンボールをエサにしている場合があるらしい)

などなど。バッタ以外の写真も時折載っているので生活の様子は伝わってきやすいです。というかむしろバッタの写真は多いというわけではないです。他にも多くの興味深いエピソードがあり、自分の生活とは程遠い世界の話を見聞きすると、世界の広さ、そして一見無関係とも思われる仕事や人も繋がりがあるということを感じることができるでしょう。